大いなる幻影 映画寸評

イギリス兵は? プラムプリン(笑

第一次世界大戦中のヨーロッパ。偵察飛行中に乗っていた飛行機が墜落しドイツ軍の捕虜となったフランス軍人のマレシャル中尉とド・ボアルデュール大尉は、ラウフェンシュタイン大尉との短い会合の後、捕虜収容所に送られる。

労働者階級出身のマレシャルと貴族出身のド・ボアルデュールは捕虜収容所では仕官待遇を受けていたが、密かに捕虜収容所からの脱出を計画していた。そして明日にでも脱出という日、他の捕虜主要所への移動を命じられる。18ヶ月後、警備厳重な捕虜収容所に連行されたマレシャルとボアルデュールは捕虜収容所所長のラウフェンシュタインと再会する。
1937年。フランス。主演、ジャン・ギャバン。監督、ジャン・ルノワール。

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あなた方の愛国心に敬意を表する

まず、幕が開けてからのテンポの良さに引き込まれました。なぜなら、無駄なシーンも無駄な会話もないからです。なんという素晴らしいツカミ。
巷では捕虜収容所映画の先駆けとして知られる本作ですが、後世の捕虜収容所モノのように白黒つけられるストーリーではありません。敵国の軍人を悪の権化に仕立て上げる描写とは無縁なのです。
フランス人と話したいと泣きわめくマレシャルをドイツ人看守が精一杯なだめるシーンは良かった。へー、ほふく前進って体にいいんだ。

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船が燃えたら水に飛び込むだろう?

愛国、階級、人種、戦争、国家。単純な勧善懲悪とは無縁なこの映画は様々なエッセンスを内包することになりました。反戦映画に数えられることもありますが、やはり一番目につくのは民主主義国家が成立することで運命づけられた「滅びゆく貴族」の姿でしょう。

捕虜収容所の中で芝居を打ったりと、労働者階級の兵士は作品通して活力に満ちあふれています。彼らは民主主義国家の原動力であり主体でもあるのです。
一方のドイツとフランスの貴族は最初から最後まで覇気がありません。彼らは自分たちが時代遅れの存在であることを自覚しています。だからこそ、二人のあいだに友情めいたものが成立するのです。しかし、その友情は価値観の違いから永遠に失われてしまいました。ボアルデュールにゼラニウムを。

哀れな牛と哀れな兵隊

一方の労働者階級の代表者である二人も、覆せない現実に憔悴しきってしまいます。一個人ではどうにもならない国家間の争い。そして、否応なく巻き込まれる市民。民族間のしこりもあります。
家の中で男の人の足音を聞く幸せ。夫や兄弟を戦争で失った未亡人の呟きに、奮い立たない男はフランス人ではありません。しかし、何時までも彼女の元にいられる訳もない。別れを告げるマレシャルに気丈に振る舞うエルザ。

この作品のタイトル「大いなる幻想」とは何のことを差しているのか。この謎は、最後の最後に明かされます。いい加減に名付けた割りにいいタイトルですね。
派手な演出も描写もない、フランス映画らしい淡々とした映画ですが、登場人物の心情を思わずにはいられない映画でした。

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