幕末太陽傳 映画寸評

へへっ、首が飛んでも動いてみせまさぁ

時は幕末、東海道の第一の宿場町、品川宿。遊ぶ金もないのに遊郭で豪遊した佐平次は、遊郭に居残って下働きや女郎衆の揉め事を解決する「トラブルバスター」として働き始める。
どんな揉め事も舌先三寸で解決してしまう佐平次は遊郭の旦那にも一目置かれるほどの存在になるのだが......。
1957年。日本。主演、フランキー堺。監督、川島雄三。

リンク先は幕末太陽傳のWiKiページです。

北の吉原、南の品川

時代劇と思って見始めると、売春防止法が成立する直前の品川の商店街の風景が映し出され、やがて幕末の品川宿の賑わいにオーパーラップしていく導入部にまず驚かされました。
WiKiを読むと、監督の川島雄三さんは導入部に輪をかけたことをラストシーンでやりたかったようですが、スタッフや出演者、特に主演のフランキー堺さんの反対で断念した経緯があったとか。
現代の品川から過去の品川宿へと飛ぶオープニングを考えると、過去の品川宿から現代の品川に佐平次が跳躍しても大きな違和感はない、と思うのは公開から五十年以上たった今だからなのかもしれません。

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起請文!起請文!起請文!

間違いなく日本映画の歴史に残るこの映画には特筆すべき点が三つあります。

一つ目は時代考証がしっかりしていること。

遊郭や品川宿、女郎の衣装や化粧の時代考証が徹底しているうえ、物語の舞台になる相模屋の作り込みが半端ないため、見ている側は本当に幕末にタイムトリップしたかのような錯覚を覚えるほど。遊女はお歯黒していて子供もいるし、遊郭に坊主が出入りしているんですよ?

二つ目は配役の豪華さ。

主人公である佐平次役のフランキー堺を取り巻く俳優陣が鳥肌ものの配役でした。
役者の若いころを知らない自分でも見ているうちに気づくんです。岡田真澄、南田洋子、石原裕次郎、金子信雄、山岡久乃、小沢昭一、菅井きん、西村晃、二谷英明、小林旭とそうそうたる顔ぶれ。菅井きんさんは、若いころから老け役だったんですねぇ。岡田さん演じる、品川生まれの品川育ちの喜助もいいアクセントでした。

三つ目はシナリオの妙。

物語は立て板に水の勢いで展開していきますが、コメディであるだけに後ろ暗さと無縁のまま進行します。
これには元ネタとなった落語の影響も無視できないのですが、この映画で何度も描かれるのは女郎のしたたかさ、女の強さです。借金の形に働く女郎がしたたかなのは自明の理ですが、倉の牢に閉じ込められた若旦那に食事を持ってきた女中のおひさの一言は強烈でした。
女郎同士がケンカをするシーンは一見の価値あり。コメディとはいえ、遊郭が舞台なのに濡れ場どころか女郎のポロリシーンがないのも考えてみれば凄いことですね。

貴女の足の相を見せてください

見所が多いこの映画を白黒映画であるという理由だけで見ないのは、もったいないお化けに百人単位で夢枕に立たれても反論できない行為であると知ってください。
個人的には、黒澤明監督の「七人の侍」や小津安二郎監督の「東京物語」と並ぶ名作(日本映画に詳しいわけではありませんが)だと思っています。コメディーである分、見て楽しめるので万人にお勧めできる幕末映画です。

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