仏果を得ず 三浦しをん 双葉社

長生きすれば、お前でも

文楽の若手大夫である主人公の笹本健大夫が、文楽の技芸員たちのあいだで「実力はあるが変人」と評される、三味線方の鷺沢兎一郎と師匠の命令で組まされたことから始まるボーイミーツ・ボーイ物語。ただし、BL要素は一切ありません(苦笑

はにぃさんのレビューを読んで。

ミラちゃんの命と引き換えに

文楽。人形浄瑠璃とも呼ばれる日本の伝統芸能である人形劇。江戸初期の大阪が発祥であり、昨今では大阪市長の橋下氏と補助金をめぐってのイザコザが記憶に新しい。この本はイザコザが起こる前の2007年に書かれた本ですけどね。
物語はこうです。

浄 瑠璃の語りである健と三味線方の兎一郎が師匠たちの命令で組むことを強要される。どちらもあまり気乗りしなかったが、すったもんだのあげく健は兎一郎の三 味線の腕と芸に向かう真摯な姿勢に胸打たれ、兎一郎に認められるようになりたいと思うようになる。兎一郎の方も、自分なりの答えを見つけ芸に活かそうとす る健の真剣さと地力を認め、健が壁にぶつかるたびに手をかすようになった。

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目に見えないものを手掴みする仕事

そんな二人に、健の師匠である銀大夫や銀太夫の相三味線の亀治といった文楽の技芸員ら、健が通う文楽教室の生徒である小学3年生のミラとミラの母親の岡田真智が絡み、七転び八起きしながら健は芸の道を突き進んでいく。
だが、面白いのが文楽の演目そのものが健の敵役として位置づけられていることだ。そう、兎一郎は頼りになるツレ。シテツレ的な役割を負っている訳です。

文楽の演目であり章のタイトルでもある、『幕開き三番叟』『女殺油地獄』『日高川入相花王』『ひらかな盛衰記』『本朝廿四孝』『心中天の網島』『妹背山女庭訓』『仮名手本忠臣蔵』をどう解釈するか、もしくは作中の登場人物の心の機微をどう自分の中に取り込むか。

健が乗り越えなければならない山(演目)はとてつもなく高く大きくて、読んでいる側としてはハラハラとドキドキが繰り返し味わえて、とても楽しかったです。
最後の最後に待ち受ける意外な山(現実)を健は無事に乗り越えることがでいるのか?
いやー、現実って本当に素晴らしいですね。

「新津小学校に行ってもらう」「!?」

大阪市長の橋下氏にぜひ読んで欲しい本です。もしかしたら彼は、論理的な思考はできても物語の解釈力に乏しかったりして。論理だけが世の中じゃない。感情だけでもない。感覚? その場の空気?
「あんた、うちのこと好いとるやろ」
このセリフ、あなたは言ってみたいですか? 言われてみたいですか?

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