情熱はマーケティングを超えるか?

戦車は好きですか?

書評サイト、本が好き!の「ソーシャルエコノミー 和をしかける経済(翔泳社)」の書評の中で、マーケティング(技術)だけではなく情熱を持つことの必然性を説きました。
なぜ、情熱が必要なのか。
それは情熱はすべての行動の原動力となるからです。今回はその格好の教材として、アニメ「ガールズ&パンツァー(略してガルパン)」を紹介したいと思います。

戦車道に興味はありますか?

ガールズ&パンツァーとは2012年10月から放送されているアニメ作品であり、戦車道という戦車を使った武道が乙女のたしなみとされる世界で、少女たちが戦車道の全国大会優勝を目指す物語です。

えー、アニメに馴染みのない方は頭の上にはてなマークが浮かんでいることと思います。私も戦車と少女という組み合わせを知った時、また安易な萌えアニメだなぁと思い、いい印象を持ちませんでした。
しかし、監督が「じょしらく」と同じ水島努監督と知り、テレビ愛知で第一話を見てみることにしたのです。 未見の方はぜひ見てみてください。
私は一話の冒頭から引き込まれました。リンク先はバンダイチャンネルのガールズ&パンツァーサイトです。第一話が無料で見れます。

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アニメで戦車を動かしたい

このアニメが制作されるきっかけは、ミリタリーオタクで戦車好きだったガールズ&パンツァー制作陣の「アニメで戦車を動かいたい」という想いからでした。やがてその想いは、アニメ業界のミリタリーオタク(略してミリオタ)や戦車好きが集まることで実現されます。

アニメで戦車を動かしたいという熱意が先行して出来上がったアニメだけに、戦車道が乙女のたしなみとされていたり巨大な空母(全長約7600メートル!)の甲板上に町ごと高校があったりと、世界観や設定がハチャメチャで突っ込みどころ満載なのがガールズ&パンツァーの特徴です。

一方、3Dで作られた戦車の作りこみは感動モノで、機動も砲塔の回転から履帯の揺れまで本物の戦車を見ているようです。戦車に代表される軍装備のSEも凝っていて、車種ごとにエンジン音が違うほどのこだわりよう。この作中の戦車に対するこだわりが、視聴者の心を掴みました。今では放送前からは予想もつかないほどの盛況ぶりで、発売した本やDVDやBDが即日完売するほどです。 いったい何がファンを引きつけたのか?――それはモノ作りへの情熱です。

知之者不如好之者

考証・スーパーバイザーの鈴木貴昭さんはラジオ「 上坂すみれの装甲親衛歩兵連隊放送」のなかで、ガールズ&パンツァーの制作陣についてこう言っています。
「みんな(3Dチームに限らず)戦車が好きで好きでしょうがない。仕事としてやっていたらここまで作り込まない(要約)」
その損得を超えたプライスレスな情熱が、素晴らしいアニメーションとして結実しファンを夢中にさせるのです。画面を通して視聴者に伝わるものなんですよ、制作者の情熱の熱量というものは。

ただし、その情熱が命取りになることもあります。ガールズ&パンツァーは1クール(三ヶ月約13話)に第5.5話と第10.5話の二回の総集編を挟んだ挙句、第11話と第12話の放送が三ヶ月先の3月に延期されるという前代未聞の事態に発展。
持てる情熱を戦車に注ぎ込んだせいで、スケジュールが押しに押してしまったのが理由です。明らかに制作側のミス、水島監督のミスでした。

情熱だけで突っ走ってしまった結果です。情熱だけでは作品は完成しないのです。 ファンから吊し上げを食らうだけならともかく、スポンサーや製作委員会のあいだで水島監督更迭の話が出てもおかしくはない失態といえます。

好之者不如樂之者

しかし、ガルパンファンは思っていた以上に冷静でした。画面を通して制作の熱意と苦労を知っていた彼らは、当たり散らしたりすることなく、発売された商品を買うことで水島監督を支持したのです。

そして、ガルパンの製作委員会も制作側の損得を超えた情熱がファンに支持されていることに気づいていました。お咎めがなかったとは思いませんが監督交代という事態はファンの情熱によって避けらたのです。
第二期や映画化の話がどこまで具体的に進んでいるかは分かりませんが、おそらく今後も水島監督が続投することでしょう。スケジュールが合わないことを除けば。tokigawaさんのアニメ考察サイト「あしもとに水色宇宙」のこの記事を読んで改めて水島監督の多才さに脱帽です。 才能がある人が情熱を持つと、ここまで活躍できるんだなぁ......。

余談

どこかで見たのにどこで見たのか特定できない(陶芸家のインタビューだったか)のですが、その人の『理想は形にしないと後を継ぐ人に伝わらない』というコメントに深く納得したことがあります。 人は形になった情熱に強く惹かれるもの。 大切な物は目に見えない。ただし情熱だけでは何事も完成しない。

ガールズ&パンツァーはそれを再認識させてくれました。

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