【童門式資料整理法】 童門冬二 実業之日本社

評伝とは人物を書いた小説

歴史上の人物の評伝小説を書く著者が、自分が評伝小説を書くにあたって、どのような人物に着目し、人物のどこに魅力を感じ、資料はどうやって集めるのか、人物を書くうえで何にこだわって執筆しているかを解説した本。

郷土史家とは論戦をしない

歴史的事実をかくのではなく、その人物の風度をかくのが評伝の目的であると著者は説きます。風度とは、そ の人物にしかだせない「らしさ」のこと。もちろん歴史的事実を無視できませんが、歴史上の人物に今までとは違った角度から光を当てることは作家の自由であ り、作家の使命でもあると論じています。

面白いと思ったのは、地元の郷土史家との付き合い方です。著者は地元の郷土史家とは深く付き合わない方がいい、と釘を刺します。郷土史家と作家では、歴史に対するスタンスが違いますからね。仕方がないことです。

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資料集めと取材のツボ

時代小説や歴史小説、評伝などの過去の歴史を扱った小説を書くうえで必須なのが歴史的資料です。著者はまず、主人公となる人物の年表を調べ、人物が生きた足跡をたどり現地に足を運ぶ重要性を説きます。取材旅行にかかせない地図、旅行案内、時刻表、県史シリーズ、行き帰りの車内での有効な時間の使い方、筆記具、史跡の周り方など、著者のこだわりの一端が明かされます。

資料集めの具体例として著者は、自著「小説 上杉鷹山」を書くうえの苦労話を紹介し、古本屋に通ったこと、現地の人によって書かれた資料が大変役に立ったこと、鷹山に関わった人物の資料を探したこと、役所の出版物が以外と役に立ったことなど、評伝を書く上で大変役に立つ体験談がまとめられています。

組織と人間というモチーフの上で

評伝小説の使命は過去を書くことではなく、現在生きていればどう行動するかを書く事だと著者は力説します。どんな人物を書くかということは、今の時代を書き手がどう認識しているかに通じるとも論じています。
書かれている内容も整理されていて、読みやすく分かりやすいこの本は「評伝」という狭い範囲に限定したものではなく、小説を書く上で集めた資料から物語を生み出す方法論について解説した本です。

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