男の服装術 落合正勝 PHP研究所

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社会人の男性が仕事で一日中着るスーツ。そのスーツ歴史と歴史に裏打ちされた一流の着こなしについて語った本。

一流の衣服に身を包んでこそ一流の男

クラッシックスーツとは流行に左右されない一流のスーツのこと。素材・縫製・スタイリングの各要素が一流であることが一流のスーツの条件です。男ならば、一流のスーツが似合う「漢」を目指すべきである。
こんな具合に、スーツ・靴・シャツ・ネクタイ・靴下の各アイテムとそれらを組み合わせた着こなしについて解説します。

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クラッシックスーツ=エグゼクティブ御用達

クラッシックスーツが一流のスーツである以上、その値段は一般のサラリーマンが手の出せるものではありません。スーツの歴史やシルエットについて解説しても、結局行き着く先は一ヶ月の給料と変わらない額のスーツや靴です。著者の「一足十万円の靴を気に入ったのなら、一ダースまとめて注文すべきである。それがダンディズムというものだ」という言葉に、素直に頷けるサラリーマンはいないでしょう。

では庶民である私達に、この本は無用の長物なのでしょうか? 必ずしもそうではない、と読み終えて私は感じています。

日本に合ったスーツの着こなしを模索してもよいのでは

たしかに実情を考えれば非現実的な主張も見受けられます。

  • クラッシックスーツに余計な機能は必要ない。第二の肌であれば十分である。(ポケットなどは少ない方がいい)
  • シャツは下着であり素肌に直接着るものだ。なのでシャツの素材は上質な綿に限る。
  • スーツのジャケットはどんな時でも人前で脱ぐべきではない。
  • シャツは糊なしの手アイロンのみ。(シャツを下着と考えるならば納得です)
  • 革靴は底が革であること。

などなど。

これらの主張にはスーツの歴史が深く関わっています。そしてスーツの歴史を知ると、ヨーロッパの気候や文化がスーツのスタイルに大きく影響していることに気づかされるのです。蒸し暑い日本の夏に半袖のシャツ姿になるのは、そのほうが快適にすごせるからです。シャツの下に肌着を着るのは、そのほうがシャツが汗で汚れないからです。

基本は大事です。それが時代や流行に左右されないクラッシックならなおさらです。ですがビジネスなら、もう少し融通を聞かせてもいいのではないか? 郷に入っては郷に従えといいます。基本を学び、それを個性に変えていくのがオシャレであるとこの本の著者も力説しています。その土地の気候風土に合わせたスタイルを認めても良いのではないでしょうか?

もちろん、夏でも涼しいヨーロッパで半袖になるのはTOPを考える必要があると思います。

化繊のシャツも魔法のシャツもクラッシックではない

いやー、便利ですよ。ノーアイロンシャツ。十八世紀にはなかったもののひとつですねぇ。まあ、著者は常にクリーニングに出しているようですから関係ないのかもしれませんが。
そういえば、著者は手アイロン推奨のためか、シャツの手入れについての記述がなかったですね。アイロンからシャツやスーツに興味を持った私としては残念でした。

真似する必要はないが理解する必要がある

この本の良さは、クラッシックの「いろは」を解説しているだけではありません。男のファッションについての金言格言が載っていることです。
ボー・ブランメルに始まり、ウィリアム・シェイクスピア、サー・ハーディ・エイミス、イヴ・サンローランなど著名な人物の服飾に関する金言格言を知ることができます。この金言格言が非常に深い。

また、日本人と西洋人の服に対する意識の違いを「エレガント」という言葉を例に解説している点も見逃せません。本来、スーツとは自らの階級を表すユニホームだったのです。クラッシックスーツがどこか貴族的なのもそこに理由があります。

スーツを着て、つり革につかまれないのも納得です。鞄ですら、本来は供の者に持たせて自分では持たないそうですよ?

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