失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇 野中郁次郎(編著) ダイヤモンド社

失敗から学ぶ成功の本質

太平洋戦争における日本軍上層部の戦略構想の甘さ、現場将帥の現状認識の不備、戦場での士官らの無策を指摘し、勝つことを定められた集団として何が必要かを解説した本。

ダイナミックな知識創造プロセス

太平洋戦争における日本軍を例に、国家戦略・軍事戦略・軍事戦術といった政治家や将官に 求められる能力から現場を指揮する中隊・小隊・分隊といった士官や下士官に求められる能力まで、幅広い分野を取り上げて解説している。共通しているのは 『人と能力』に注目している点だろう。

なぜ当時の軍上層部は現実から乖離した軍事戦略を是としてしまったのか。軍事の『専門家』である彼らが素人でもしないような判断ミスをし、強行してしまった理由は何か。
石原莞爾、辻政信、山口多聞の三人の軍人を詳細に分析して、組織に求められる人物像や執行責任者に求められる人物像について解説する。

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成功は失敗の母

過去の成功体験で培われた教訓を絶対的なものとした結果、行われた『バンザイ突撃』という愚行。柔軟な思考を持った人を育てられなかった陸軍大学と陸軍士官学校。過去の成功体験が人々の視野を狭め判断を狂わせる事例を軍官僚や将官、士官を引き合いに出し解説します。

組織についての解説では軍上層部が口にした『空気』について分析します。
以前のNHKの番組で戦争に至る経緯をレポートした番組がありました。その番組の中で参謀本部の作戦部長は会議の『空気』を理由に作戦に反対できなかったことを、作戦部の軍官僚は異議を唱えることができない『空気』を作戦部長の決断を承認した理由にあげていました。

この目に見えない『空気』は日本独特のものらしく、今まで解説した本は見たことがありませんでした。この本では『空気』について、沖縄水上特攻作戦をめぐる参謀本部作戦部と伊藤整一中将ら司令部の議論を例にあげ解説している。
なるほど、取引コストですか......。人間の限定的合理性が問題となるとは。

派閥をなくす派

皇道派や統制派の歴史を例に派閥についても考察しています。派閥は移り変わっても派閥自体はなくなることはないこと。派閥の存続は効率と正当性、派閥を統治する人物によって決まること。
統治者の一例を上げれば、アメリカ軍の所有者(統治者)は最終的にはアメリカ国民に帰属します。そのため、アメリカ国民の声(世論)がアメリカ軍の行動を左右した事例がいくつもある。ベトナム然りアフガニスタン然り。
では日本軍はどうか? 天皇や政府の指示とは無関係に日本軍が行動したことはなかったのか?

......派閥を会社や政府、国家に変えても通じそうですね。
その会社が潰れたのは効率と正当性、そして社長に問題があったからだ、と。
ん? 会社の統治者は社長なのか?

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