日本にノーベル賞が来る理由 伊東乾 朝日新書

拝啓、ノーベル賞選考委員さま

アジアの中でなぜ日本だけにノーベル賞受賞者が多いのか、ノーベル賞の設立の経緯からノーベル賞の個性やノーベル賞の背景について解説した本。

選考委員募集(ノーベル賞の企画を一緒に考えてくれる人)

ノーベル賞は高い業績さえあげれば貰えるものではない。誰でも知っているような素晴らしい発見や発明しながら、ノーベル賞を貰えなかった人が大勢いる。それはなぜか?
ノーベル賞には目的や明確な意図がある。キーワードは平和。そしてバランスです。
ノーベル賞が生者にしか与えられないのは周知の事実ですが、軍事関連の発明や発見をした科学者への風当たりが冷たいことを著者は過去の受賞者の顔ぶれから分析します。キーワードである平和に反するからです。

ノーベル賞は賞の選考過程に「平和」という政治的理由があるのです。

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ノーベル賞受賞者にみる平和とバランス

日本人初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹博士の受賞には、ノーベル賞を選考する側の「原爆投下への謝罪の意を込めて、日本科学を世界第一線のものと承認するセレモニー」という企画意図があったと著者は推測します。さらに、冷戦中はアメリカやソ連のどちらかに偏らないよう、腐心して受賞者が選ばれていた節があると、ノーベル賞を受賞した人たちを紹介して論拠としています。つまりキーワードの平和とバランスがここでも明確に見て取れる。

また研究結果だけでなく、研究者の人格がノーベル賞の選考基準になってる事例も紹介しています。

科学立国であるための日本の課題

自国で生まれ、自国語で世界最高度の教育を受けた科学者が内外で世界をリードする研究を進めている国は、欧米や日本、オーストラリアやイスラエルなど世界のごく一部。中国やインド出身の科学者が、先端的な研究をする「舞台」に欧米諸国(特にアメリカ)を選んでいることからもそれが分かります。
日本も例外ではなく、より研究がしやすい環境を求めた科学者の頭脳流出は続いています。今後も日本が科学立国として成り立っていくためには知の好循環が必要であると著者は力説します。

知の好循環とは、

  • 若い研究者に資金と時間を与え、自分の研究ができるようにすること
  • 異なる分野の科学者が自由に意見交換ができる環境を作ること
  • 研究結果を産業に結びつけ、資金の面で科学者に還元すること

の三つであり、特に三つ目の研究の知財化を著者は重視しします。

なぜなら研究が知財化されることで、研究を広く世界に認められた研究者の意欲が高まるり、知財化で得た資金を研究費に回すことで金銭的な制約が軽くなるからです。最近では人のIPS細胞の開発した山中教授が研究成果を知財化したニュースがありました。

この本は、「平和」という明確なメッセージをもっているノーベル賞についての解説と、資源を持たない日本が科学立国として成り立っていくための方法について提言した本です。

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