悪魔のささやき 加賀乙彦 集英社新書

どのようなときに悪魔はささやくのか?

ささやくものの虚実。東京拘置所の医務技官として数多くの犯罪者を診察し、長年に渡り精神医学・犯罪心理を研究してきた著者が老若男女を問わず人々の心に巣食う悪魔の正体とそのささやきについて解説した本。著者はその正体を自己破壊願望(タナトス)であると定義する。タナトスは人々の心の内にあり、常に人々にささやいているのだという。もちろんそのささやきは日常生活の中で意識されることはない。

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悪魔のささやき (集英社新書)

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悪魔のささやきとは何か?

だが人はさまざまな要因により心を乱し精神が不安定な状態となる。著者はそのような精神状態を「辺縁意識」と命名し、辺縁意識の状態になった人が正常な判断力を失い悪魔のささやきに支配されていった経緯と、個人だけではなく集団も辺縁意識状態になることを戦前・戦後の例をあげて解説する。

ではどうしたら悪魔のささやきにあがらえるのか?

著者は有効な手段の一つとして、個の確立の必要性を説きます。個の確立とは知の確立と同義であり、思考の立脚点を持つことにつながります。
自分の周りの世界を見回し、入ってくる情報の真偽を確かめ自分で考え己の言動を常に検証する。物事の本質は何かを問いかける姿勢を崩さず、生きることを楽しみ、また楽しませること。真の個人主義とは、自己中心的な考えに支配されることではなく、自分 なりに社会に何ができるかを考え、実行することであると著者は力説します。

個の確立自体は悪魔のささやきの対抗手段というより、辺縁意識の状態にならない ための方法のような気がしますが......。宗教も悪魔のささやきの対抗手段になりえますが、別の意味で辺縁意識状態になりかねないのが玉に瑕です。

悪魔のささやきを凌駕する、天使のささやきによって。

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