生物と無生物のあいだ 福岡伸一 講談社

生物の動的な平衡とは何か

アメリカでの野口英世の評価に始まり、ウィルスやDNAが発見されるまでの研究者たちの試行錯誤の過程、著者が携わった研究の詳細を通して、DNAレベルでの生命の動的平衡についてつづった本。

野口英世が偉人ではない理由

日本で偉人として知られる野口英世の研究結果が今日では全く顧みられていない理由を知って正直驚いた。そして、彼の真実の姿を喧伝しない日本のマスコミに失望を覚えた。彼の研究結果は事実ではなかった。彼は光学顕微鏡では観測できないウィルスを見ようとしていたのだ。
ウィルスは生物か否か。DNAの複製、すなわち自己増殖性を持っているだけでは生物ではない。著者はウィルスを生物として認めない立場を明かす。

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遺伝子発見に至るまでの歴史

遺伝子は特殊なタンパク質であると考えられていた当時、地道な研究の結果、遺伝子の正体がDNA(核酸)であることを突き止めたオズワルド・エイブリー。
シャルガフのパズルからDNAの二重螺旋構造を解明したワトソンとクリック。その二十世紀最大の発見にチラつく一人の女性、ロザリンド・フランクリン。

DNA解明のきっかけとなった一枚のX線写真は誰の手からどのようにしてワトソンとトリックの手に渡ったのか。そこに不正はあったのか、なかったのか。
シュレディンガーの猫で有名な物理学者、エルヴィン・シュレディンガーが書いた一冊の本『生命とは何か』の中で立てられた一つの問い「なぜ原子はそんなに小さいのか?」から導き出される生物がこんなに大きい理由。

動的平衡とはどのような現象か

生命を維持するには秩序が必要不可欠であり、生命が秩序を維持するには物理的な制約を乗り越えなければならない。そして、どのように生命は秩序を維持するのか、その方法は長い間謎だったがルドルフ・シェーンハイマーの実験によって解明される。それが動的平衡と呼ばれる現象だった。秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。

著者は自らが行った研究を詳細に解説し、生命が持つ相補性に焦点を当てる。タンパク質分子の部分的な欠落や局所的な改変のほうが、分子全体の欠落よりも、より優位に害作用を与える。機械には時間はないが、生命には不可逆の時間の流れがある。

生命とは動的平衡にある流れのこと

野口英世の話から細胞より小さいウィルスの発見、DNAの発見とそれにまつわる逸話、自らの研究の経緯やエピローグの少年期の体験談など、著者は読者の関心を引きつける話題選び・構成が巧みで読み手の心をつかんで離しません。

自分の好きなことをしているようで、大変なんですね、研究者も。
死んだ鳥症候群か......。

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