クロワッサンとベレー帽 鹿島茂 中公文庫

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フランスにはないフランス人形

勝つための論文の書き方の著書であり歴史探求番組でちょくちょく姿を見かける鹿島茂が、フランス、特にパリゆかりの品々について語ったエッセイ集。

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愛を語ってこそフランス語である

パリにゆかりのある品々をあの手この手で語り明かした一冊。1984年から1999年にわたり連載されていたものをまとめたもので、単行本にまとめられたのが1999年、文庫化されたのが2007年と時代的には少し古い本だ。
が、内容的には興味をそそられるものが多く、結構楽しめて読めてしまった。

情報が古いにもかかわらず楽しめて読めてしまった理由は、著者がフランス文学の研究者であることが大きい。絵葉書、リボン、ヘアー・ブラシ、身繕いセット、ゲートルなどなど、多くのものを紹介している本書だが必ず著者は取り上げた品物の歴史を調べ、その品の生い立ちを解説している。

公園における椅子とベンチの違い

その品物についての感想を語るエッセイは多くあるが、その品物の歴史をふまえて雑感を語るエッセイはそう多くない。まして、フランスのパリにまつわる品々を解説するエッセイは貴重だ。
たとえば、フランス人形はフランス軍の鉛の人形とセットで売り出されたものだとか、炭酸水は初め医師の処方箋を必要としたとか、ジャン・ギャバンが靴底でロー・マッチをすって火をおこす理由など、古くて新しい情報がフランスやパリの風景を通して語られていく。

ボロボロのシトロエンとピカピカのガラス

本の後半はパリの人々の習慣やフランスというお国柄を著者なりに解説している。素直に罪を認めず、できうる限りの自己弁護をするのがフランス流。イギリスの芝生は青い。フランス語は愛を語るためにある。私だけのパリ。石畳をすぎる時間。血中フランス人度。パリで宅配新聞が廃れた理由など、どれもパリやフランスの当時の息づかいを感じるものばかり。

昔の、そして20世紀のパリを知りたいのなら読んで損はない本です。

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