日本人へ 国家と歴史編  塩野七生 文春新書

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ローマ人的国家論

ローマの勃興から衰亡までを書いた『ローマ人の物語』で一大ローマブームを築いた著者が、現代日本が直面する政治・経済・その他諸々の難題をローマ人の視点で考察した本。

国思う故に我あり

客観的な合理主義者でありながら徹底したリアリストでもあったローマ人。
ローマ千年の繁栄はこの二つの能力によるところが大きいと私は考えているが、この本を読むうちにローマ人のもう一つの特性に気がついた。

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階級社会=固定(安定)社会

それは国家の構成員としての果たすべき義務と守るべき権利ついて共通認識があったことだ。カエサル、アウグストゥス、ティベリウス、ウェスパシアヌス、トラヤヌス、ハドリアヌスといったこの本に登場するローマ人(つまり標準的な市民)はみな、国益と公益を第一に考えローマ帝国の代表として国家のために辣腕を振るっている。

え? 執政官や皇帝になる人物を標準的な市民と呼ぶなって? 皇帝はプリンケプス(第一市民)の称号を帯びたので、まあ問題ないかと。
へー、階級があったほうが社会は安定するんですね。公平で自由なのも問題だ。

民主制度の欠点をあげよ

ところで日本の総理大臣って、第一市民もしくは第一国民の自覚あるんですかね? 日本人に足りないのは、民主主義に対する懐疑的な視点と国家についての議論だと思います。
ふと見たテレビで、日本を訪問したアウンサンスーチー女史はこんなことを言っていました。『民主主義制度は欠点もあるが、今の私達には必要な制度なのだ』と。

欠点を知り長所を知れば......

民衆の声を反映していれば日本は必ず良い方向に進む。民主制度は欠点のない制度である。などと幻想を抱いている日本人は多いように感じます。特に六十年代から七十年代の学生運動に参加した人たちにはその傾向が強いような気がする。
そんな都合のいいものが、この世の中にあるはずがない。

移民は社会に活力をもたらしてくれるが、同時に様々な解決困難な問題も起こす。また、公平であることでかえって社会のバランスを崩してしまうこともある。また平等であろうとして、社会全体の不利益となってしまうこともある。

ローマに学べ

『風呂好き』という一点でローマ人に親近感を持っている私ですが、今の日本人と歴史上のローマ市民とは国家や歴史、軍事力に対する考え方がまるで違う。それはもう、ローマ市民を自立した大人と考えると今の日本人が赤子に思えるほどです。

マキアヴェッリの言葉「自分で自分を守ろうとしない者を誰が助ける気になるか」は、今の日本のすべての事象に当てはまると思います。教育、年金、医療、介護、生活保護、地方分権、死生観。探せば出てくる出てくる。

古きを訪ねて新しきを知る

確かに人が集まって国家が出来るのですが、それだけでは国は豆腐程度の硬さにしかならない。ただ人が集まってできた国家では、繁栄は続かないのです。今の日本はまさに絹ごし豆腐そのもの。もしくは一頭の羊に率いられたライオンの群れ。個々としての強さはあっても集団としての強さはありません。
それもすべて、民主主義にとって国家とはどうあるべきかというテーマに対する答えを共有していないからです。

ローマに学ぶ日本の未来

考えてみると、GHQは中途半端なことをしました。過去の日本を破壊しておきながら、アメリカの真髄を日本に教えなかったのですから。
中学校で中途半端に世界史を教えるより、ローマ史を教えたほうがよっぽど西洋を理解する手助けになるような気がしますが、気のせいですかね? 塩野先生。

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