殺処分ゼロ 藤崎竜士 三五館

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どうせ、お前らは犬殺し屋だろが!

「殺処分ゼロ」という大目標を立てた熊本市動物愛護センターは、どのようにしてその目標に取り組んだのか? 熊本市動物愛護センター職員へのインタビューを元に再構成した本。

二つの法律の狭間で揺らぐ命

日本で犬やネコが殺処分されている現実を知って愕然とした。年間で推定三十万頭。我々は一年でそれだけの数の犬やネコを殺している。
日本には動物に関する法律として、代表的なものに狂犬病予防法(厚労省)と動物愛護法(環境省)がある。狂犬病予防法のもと、自治体は狂犬病の流行を防ぐ ために野犬などを捕らえて殺すことが出来るし殺す施設もある。飼い主から飼えなくなったから殺してくれ、と直接持ち込まれることもある。

狂犬病予防法(昭和25年)から遅れて、昭和48年に定められた動物愛護法は動物の愛護および管理に関する法律だ。動物を虐待することの禁止、動物販売業者や飼い主の責務や規制について、動物愛護活動についてなど、頭物の身体や命を守ることを目的としている。

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殺すために、獣医師になったんじゃない

一方の法律では殺処分を指示し、一方の法律では愛護を指示する。処分場で働く獣医師や業務員は、その矛盾に長い間苦しめられてきた。誰だって、助けられる命なら助けたかった。
その現状に疑問を持ち、殺処分ゼロを目指して立ち上がった人たち。淵邊を先頭に、後に続いた松崎、松本、中間、岡崎、櫛島、野美山、小山、久木田たち職員が行政として出来うる限りのことをし、獣医師会、動物愛護団体、動物取扱業者、盲導犬使用者の会の人たちの理解と協力を得ながら、少しずつ殺処分を減らす方向で改善していく。

今でも問題は山積みだ。が、彼らは決してくじけることなく、殺処分ゼロを目指して最善を尽くしている。

市民の意識改革が絶対に不可欠

いくら彼らが力を尽くしても、殺処分場に持ち込まれる数が減らなければ効果は上がらない。飼い主、ひいては市民の意識改革が必要になってくる。

安易に犬猫を飼わないこと。犬は必ず登録すること。伝染病や病気の予防注射を年に一回すること。犬猫の生態にあった飼養をすること。他人に迷惑のかからない飼育をすること。きちんと躾けること。散歩のときはリードをすること。必要に応じて不妊手術をすること。最後まで面倒を見ること。

いっそのこと、ペットを飼うのを許可制にしてはどうだろう? 保健所などで一年に一回講習を受ける義務を設ける。違反した場合は二十万以下の罰金が科せられる。食品衛生責任者ならぬ、愛護動物飼育管理者という資格がなければペットを飼うことができない制度は。

他の命の上に成り立っているという自覚

現代の日本人が、命の価値を皮膚で感じなくなって久しい。いつしか我々は、日々命を食べているという当たり前のことを忘れてしまっている。思えば自分も、毎日食料を得ているのに豚や牛を屠殺(用字用語辞典が『食肉処理』に変換することが望ましいと指示してきた)する場に立ち会ったことが一度もない。

ゲームを悪くいう人は、子供たちが命の価値を軽視するのはゲームが原因だと息巻くが、ゲームだけが問題なのではない。本当の原因は、豚や牛を殺して肉を得ている現実を親が子供に教えないからではないだろうか。いや、頭では理解している。目の前の現実として知らないから実感が伴わない。

命の重さを忘れて生きる私たち

小動物とはいえ、目の前で息を引き取られると強いショックを受ける。街中でときおり、車にひかれた犬猫の死体を見ることがあるが、その時受ける衝撃を百倍にしたぐらいの強さ。胸がキリキリと痛んで足がガクガク震えるほど。

この本は、人間の身勝手で命を絶たれる犬猫たちの現実を詳細に解説し、殺処分ゼロに向けて努力を続ける熊本動物愛護センターの取り組みを紹介した本です。

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