絵で見る十字軍物語 塩野七生 新潮社

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神に導かれた戦士たちの歴史

中世ヨーロッパおよび中東に光と影を落とした八度にわたる十字軍の歴史について、見開きページの左ページにドレの挿絵を、右ページの上半分に地図を載せ、右ページの下半分に著者による簡単な解説を加えた本。

忘れられない絵との思い出

約二百年の歴史を持つ十字軍の歴史を扱いながら、この本の解説が必要最小限に留まっている理由はドレの絵にあります。そもそも著者が十字軍の歴史を書くと決めた時、真っ先にひらめいたのがドレの絵で十字軍の歴史を解説することでした。

ドレの絵と著者との出会いは前書きの『読者へ』で語られていますが、ペンで描かれたドレの絵は現代でも通用するほどの精密さと構図で描かれていて著者が一 目で魅了されたのも頷けます。ドレの絵に心魅かれた著者は『歴史と地理は表裏一体である』という著者の信念を実現するため頭をひねることになるのですが、 その結果生まれたのがこの『絵で見る十字軍物語』という訳です。

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信じるもののために戦った人々

著者による十字軍の物語は四部構成を予定しているそうで、この本はその一巻目であり、著者の前置きによれば「序章」にあたります。
その序章の内容ですが、約二百年にわたる十字軍の歴史の中でも有名なエピソードをドレの絵を引用して紹介しています。つまり詳細な解説は一切ありません。そのため、読む側に十字軍ついて教科書程度の予備知識は必要になるでしょう。まあ、予備知識もない人がこの本を読むとは思いませんが、キリスト教やイスラム教の基礎ぐらいは押さえておくべきでしょう。

ドレの絵で描かれたもの

著者も指摘していますが、ドレの絵で特筆すべき点は善と悪の構図を採用していない点です。キリストや天使や聖人が絵に登場することはありますが、どの絵もイスラム側の人々が人間として描かれています。なにしろ、最初の挿絵が聖地巡礼途中のキリスト教徒を助けるイスラム教徒の絵なのですから、ドレの作品に対する姿勢は徹底しています。

挿絵で読む十字軍の物語

この本は、絵本を読むような気軽さで約二百年にも及ぶ十字軍の生い立ちや節目となった戦い、騎士たちを送り出したヨーロッパの世上について紹介した本です。TVやラジオの公開番組における前説のようなもの、と考えてみると分かりやすいかもしれません。

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