古代ローマ人の24時間 アルベルト・アンジェラ(著)関口英子(訳) 河出書房新社

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現代に匹敵するローマ市民の日常生活

古代ローマ帝国の首都、ローマでの人々の暮らしぶりを早朝から深夜まで24時間にわたり観察し詳細に解説した本。ローマ市民の日常生活に焦点を絞った解説は丁寧な描写もあって分かりやすく、容易に読者を遙か過去のローマへと連れ去ってくれる。

都市ローマにおけるローマ市民の生活を詳細に解説した本。
当時の裕福な市民の近代的なライフスタイルには驚かされるが、貧民や奴隷の貧しい生活についても著者は冷徹に解説していきます。当時のローマ社会を陰日向で支えていたのは法律、体制、ローマ市民の意識、そして奴隷制度でした。

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古代の人種のるつぼだったローマ

アトリウムがある高級住宅に住む市民がいる。違法に積み上がっていくインスラ(現代の七階建ての高層アパート)に住む市民がいる。宴席で食べたものを床に捨てる(ローマでは正しいマナー)市民がいる。インスラの窓から汚物をぶちまける市民がいる。当時のローマでは貧富の差が激しかったようです。ただ、裕福な市民も貧しい市民も深夜のローマの街を一人では歩かないということだけは共通していました。
様々な人種、様々な職業、様々な身分の人々が生活していた当時のローマは、現代のニューヨークに近かったのではないかと著者は推察しています。

まっくろくろすけの由来?

改めて気づかされたのは明かりの希少さです。
ローマでは日の出と共に起き日の入りと共に寝る生活が一般的でした。なぜなら、人工的な明かりに乏しかったからです。当時は電気もガスもない。火をおこすのも手間でした。

例え薪となるものがあったとしても、室内で燃やせば煙が立ち上り真っ黒なススが壁一面をおおうことになります。室内を浮遊したススは人体に有害であり、長年吸い続ければ健康被害もあるでしょう。また、安価な燃料として乾燥した動物のフンが使われていたため、匂いなどの問題もありました。
現代の日本では夜の明かりに困ることはありませんが、世界的に見れば希有なことであることを思い起こす必要があるでしょう。

見てきたような考古学的事実

ローマの街のありとあらゆる出来事について書かれた本ですが、ローマのすべてを解説している訳ではありません。ローマのすべてを書き尽くすには四百ページ強のこの本でも足りません。ローマの街に限定して書かれているからこそ、読みやすく分かりやすく詳細な解説で読者を楽しませることができる。しかし、この本を読み終えるともっとローマのことを知りたくなるのです。もっと著者が書いたローマについての本が読みたくなるのです。

ローマの平和は地中海を中心とした交易を活性化しました。話しによると、ローマの街道は整備が進み昼間であれば快適な往来が保証されたとか。
著者にはぜひ、ローマの街道(陸路も海路も)と交易の詳細についての本を書いてほしい。

ローマ市民(裕福な男性にかぎる)になりたい!

この本を本屋で手に取ると、あまりのページ数と字面の多さに引いてしまうかもしれません。しかし、いざ読み進めてみると意外と苦もなく読み終えてしまいました。もちろん、ぶっ続けて読んだ訳ではありません。読み終えるまでの時間は、おおよそ合計して五時間ぐらいでしょうか。いやー、楽しい五時間でした。

一つ残念なのが、これだけの情報量がありながら索引がないためリファレンスとして使えない点です。章タイトルから当たりをつけて読み調べるしかありませんが、読み調べるうちに我を忘れて読みふけってしまうことは想像に難くありません。

ローマ帝国の首都だった当時のローマに興味がある人だけでなく、今のローマに興味がある人にもお勧めできる本です。

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