イスラーム基本練習帳 山内昌之・大川玲子(監修)造事務所(編著) 大和書房

イスラームの視点から

世界に約十五億人の教徒を数え、経済的発展著しいイスラーム国家の屋台骨であるイスラム教(イスラーム)。三大宗教であるイスラームについて、宗教的、経済的、政治的な観点から解説した本。

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イスラームは中東だけにあらず

イスラーム国家というと中東を思い出す人もいるかもしれませんが、イスラーム圏は中東だけにとどまりません。東南アジアに限ってもインドネシアやマレーシア、ブルネイなどがムスリムの多い国になります。

日本にもモスクあり升

特にインドネシアは全人口の約九割がムスリムという実質的なイスラーム国家です。ちなみに、日本にはインドネシア人ムスリムが約二万人ほど滞在しているとのこと。正直、イスラームを信仰している知り合いを知らないので、日本で生活しているムスリムの方々が多いのには驚きました。日本には約十万人ほどのムスリムたちが信仰を共にしているそうです。......日本でイスラームの信仰を守るのはとても大変そうですね。

アラブの春の正体

日本のマスコミで民主化運動として取り上げられた「アラブの春」ですが、その正体は日本や欧米が期待するようなものではありませんでした。
アラブの春の原動力となったのは主に二つ。一つはイスラームへの信仰です。
イスラームがキリスト教に基づく西欧の価値観と大きく違うのは、共同体の平等と貧富の格差の解消を宗教的義務としている点です。

ザカートとサダカ

共同体の平等と貧富の格差の解消の手段として宗教的に勧められているのが、ザカート(喜捨)とよばれるムスリムに課せられた「五行」のうちの一つです。現在でも、サウジアラビアやバーレーン王国などの一部の国では、税金の代わりとしてザカートの名目で決められた額をムスリムたちから徴収しています。宗教的義務なので、ムスリムでない企業や個人には支払う義務が発生しません。(代わりの税は存在します)
つまり、アラブの春は個人の権利や利益を求めてのことではなく、イスラーム共同体の平等と格差の解消を求めて起こされた宗教運動としての側面があるのです。

アラブ社会の米騒動

もう一つの原動力は、ユース・バジルと呼ばれる偏った人口構成とそれを原因とする若者の高い失業率です。
ユース、バジルとは人口ピラミットで二十歳前後の人口が他の世代の人口より極端に多い状態を指します。表の形としては下ぶくれの壺型となり、国や共同体がその状態にあるときは人口が働き口を上回るため、働きたくても働く場所がない不満が若者たちのあいだで蓄積されていくのです。
働く場を求めての運動ですから、働き口さえ見つけられれば西欧的自由や人権など絵に描いた餅と同じです。むしろ、西欧的価値観など信仰心の障害でしかありません。

政教分離は至高ではない

日本や西欧は政教分離が原則ですが、イスラームの社会では政教一致が理想の社会です。
イスラームの教えに則った政治が執られ、イスラームの教えに満ちた社会であること。これがムスリムたちの理想なのです。
私たちは西欧的価値観の観点から政教一致の社会を異端視してしまいがちですが、それは間違いであるとこの本では歴史を紐解き解説します。政教一致の社会でも豊かで幸せな国家は歴史上存在したのですね。

イスラーム流男女の別

アラブの春についての解説はこの本の中の一部分でしかない。
この本では、クルアーンやシャーリアといったイスラームの教えやイスラームの習慣、現在のイスラーム国家におけるイスラーム法について解説する。イスラームで特徴的なのが男性と女性の服装だろう。特に女性の服装は国によって差はあるが黒い布によって髪や肌を隠す点は変わらない。禁止が存在しない寛容な宗教といわれるイスラームにおいて、女性の服装は厳格に「制限」されているといっていい。

また、イスラーム法に厳格な国ではバスなどの乗り物の入り口が男女別につくられている例を挙げ、イスラーム社会における男女の別について解説する。一方で女性政治家を幾人か紹介し,国によって女性を取り巻く環境が大きく違うことを説明する。

イスラームの食に関する制限

まず、豚肉や豚肉から作られた加工食品を食べることは禁止されています。調味料であっても、豚肉が原料であれば口にしてはいけません。豚肉を食べたムスリムは地獄に送りになるといわれているからです。酒も人心を惑わすので飲むのはもちろん販売も禁止。ただし、トルコなど許されている国もあるようです。
貴方がムスリムとなった場合、豚肉だけではなく豚肉から作られたスープを使った豚骨ラーメンも食べられません。さらに海外では、豚に由来する酵素を使っていた「味の素」が社会的事件として取りざたされ、工場の関係者が逮捕されたりもしています。

ハラールという安心

日本でムスリムたちが暮らすことがいかに大変か、食に関することだけでも分かっていただけたことと思います。製造過程の酵素にまで豚が使われているか気にしていたら、それだけで日が暮れてしまいます。そこで、ムスリムの食の問題を解決するのが「ハラール」です。
ハラールとは、簡単にいってしまえばその食品がイスラームの法に反していないことを保証するもので、文字だったり絵だったりして食品の目につくところに配置されています。ハラールがあればどれだけ食べても安心という訳です。

名誉の殺人とは

イスラームについてさまざまな角度から解説しているこの本ですが、二つほど意外だったのが男女の別とジハードの意味についてです。
貧富の差の解消と共同体の平等を説くのが本来のイスラームの教えです。それは男女の間でも同じで、女性蔑視は原始のイスラームの教えではないとこの本では力説します。
そもそも、開祖ムハンドマの妻であるハディージャは裕福な女性商人であり、当初はムハンドマの雇い主であったのです。

ジハードの本当の意味

ジハードの意味についても、本来の意味は「信仰に対する努力」でありジハードを「聖戦」とする現代のイスラームに異議を唱えている。
そのジハード(信仰に対する努力)も正確には二つに分けられ、個人の内面の戦いを「大きなジハード」と呼び、外敵との戦いを「小さなジハード」と呼ぶ。つまり外敵との戦いより個人内面の戦いのほうがより重視されていたのです。

イスラーム、そしてムスリムを知るために

日本でグローバル化が叫ばれて久しいですが、その実態は遅々として進んでいません。公的機関が税金を投入する理由や、企業や団体が補助金を受け取るためのお題目になっている印象があります。
この本を読んで、少しでもイスラームに関する間違った先入観を正してみてはいかがでしょう。

まあ、天国に行けるのはムスリムだけで、ムスリムでない私は地獄に落ちるのですが。
豚肉美味ーぇ。

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