日本語が世界を平和にするこれだけの理由 金谷武洋 飛鳥新社

心を癒やす日本語

他の言語にはない日本語だけが持つ独特の言い回し。あいまいで主語のない日本語固有の話法が人々の心を穏やかにする理由を綴った本。

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国民性を形作るものとは

よく、その国の国民性について語られることがあります。日本、中国、韓国と極東アジアだけ見ても、それぞれの国民性は違います。
では、国民性は何から作られるのか? 自然環境か? 社会制度か? 宗教に代表される倫理観か? その国の歴史か?
以前から国民性とはいったいどこから来るのか疑問に思っていました。

国民性とは複数の要素の集合体です。集合体であるがゆえに唯一無二であり、集合体であるがゆえに他と共通した部分を持ち合わせる。それが国民性です。
その集合体の核となる要素があるとしたらそれは何か?
この本を読んで、国民性を形作る上でその国の言語(特に話し言葉)が大きなウエイトを占めるのではないかと思いました。

曖昧な日本人と曖昧な日本語

良く日本語は曖昧な言語だといわれます。はっきり白黒つけなかったり、遠回しの言葉を使ったりなど、日本語が曖昧であるという理由を見つけることはそう難しいことではありません。
この本では英語などの諸外国語と日本語の違いに焦点を当てていきます。
話し言葉において主語を省略する日本人。しかし、主語である人称を省略することで、話し言葉としての日本語が他言語に類を見ないほど簡単で覚えやすい事実を著者は指摘します。逆に、何にでも主語をつける煩わしさや、単数複数で形を変える人称代名詞の難解さを例に、英語やフランス語が日本人にとってどれほど難しい言語かを解説します。

現在地を英語にすると?

日本語と英語などの外国語とでは何が違うのか。それば話し手である「私」と「貴方」の位置です。話し手の向き、つまり何を見て話しているかが違うのです。
映画などの告白シーンでは、外国語と日本語の「視線の向きの違い」が明確になります。強いていえば、相手に寄り添うか相手と向かい合うかの違いです。
日本映画では告白シーンの多くで同じ物を見つめて話すこと多いのに対し、欧米の文化圏では相手の目を見て話すことがほとんどです。これは共感を求める日本語と同意を求める外国語との意識の違いからくるものだとか。

白黒は灰色の決着の夢を見る

著者は英語は自分を大きく見せる言語だと喝破します。英語は自分を大きく見せて相手に同意・服従を求める言語。というか、世界の大半の言語は、相手と対立することで決着を求める「白黒型」なのだそうです。一方で日本語は寄り添う言語だと著者は主張します。主語を省略したり人称を省略したりして、あえで曖昧であることで相手との対立を避けようとする言語なのだそうです。対立的な英語などの言語と比べ、日本語は「灰色型」であると著者は説きます。
だが、それがいいのだと。

人に優しい日本語

白黒つけないからこそ解決することも世の中にはある。むしろ白黒つけてしまったら不平や不満が必ず出る。誰もが納得する決着などない。灰色の決着は誰が勝者でもないし誰が敗者でもない。勝ち負けが存在しないからこそ、誰一人深手を負わないのだと。
日本語、ひいては日本人の特徴は「全体の中に自分を合わせていくこと」と著者は説きます。

日本語の文法は明治生まれ

皆さんも中学などで日本語の文法を習ったと思います。説明されても説明されても、私にとって日本語の文法は難しいだけでなく意義不明であり、テストではいつも赤点でした。
実は日本語の文法は、明治になって英語やフランス語の文法を参考に作られた物だそうです。そのため、話し言葉としての日本語に合わないどころか勉学の障害でしかなく、著者は文法にそった話し言葉を使うことを非現実的と切り捨てたこともありました。

実は日本語(話し言葉)は世界中で一番簡単な言語であるという著者の主張には説得力があります。格変化なんで大嫌いだーっ! 男性形名詞、女性形名詞だけならまだしも、中性形名詞って何だそれーっ!

日本語は好きですか?

世界の人々のあいだで日本語を習う人が増えているといいますが、たとえ日本人でも日本語を新たな視点から見直すなら、ぜひこの本を読むべきです。
25年にわたる日本語教師の観点から日本語を学ぼうとする人のために日本語の10大特徴を紹介していますが、これが本当に話し言葉としての日本語の芯に迫ったものなので、ぜひ一読をお勧めします。

大好きです

この本が素晴らしいのは決して小難しい本ではないことです。読んで楽しめて、日本語について理解が進み、日本語に愛着を持つようになる。この本を読めば、さらに日本語が身近に感じることでしょう。
お勧めです。

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