学校では教えてくれないお金の話 金子哲雄 河出書房新社

流通ジャーナリストである著者が中学生を対象に景気が良くなるとはどういうことか、仕事をしてお金がもらえるのはなぜか、得する買い物と豊かな生活をするために今から何をすればよいかをつづった本。

世界でたった一人の流通ジャーナリスト、金子哲雄さんが中学二年生に向けて人生にまつわるお金について、十代のうちに知っておくべきことを分かりやすく解説した本。

稼ぐことに無知だった中学時代

中学生の時、人生でこれから必要となるお金について試算した金子さんは、これら人生で必要となる経費を稼ぐための手段を大学卒業までに身につけなければらないことに愕然としたそうです。――もう、ここから普通の人と違う。中学生の時、私は人生の経費について考えたことなど一度もありませんでした。まして、親が学校の授業料を払うのは当たり前とさえ思っていたのです。

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金銭感覚とコストと景気

金子さんはお金の価値はTPOで変わることを説明したうえで、お金持ちの定義を人よりも多くのお金を 世の中に回せることとし、自粛して貯めこむより自分や世の中のためにお金を使うべきと強調します。

ただし、ただお金を使えば良いというものではありませ ん。使うのなら最大限効果的に使うべきで、そのためには世の中にお金が回る仕組みを知っておくべきと念を押します。面白いのは、自分だけではなく、世の中 もお金を使う対象にしている点です。

売手と買手と費用効果

物の値段が決まる要素として、需要と供給、原価と人件費、人気と希少価値を紹介しています。たとえば、物をたくさん作ると何故安くなるのかを分かりやすく解説しています。物をたくさん作ったからといって人件費や部品代が極端に下がるわけではありません。大量生産にコスト低減効果があるのは一つあたりの開発コストが下がるからです。

また、一回の買い物で一つ買うより二つ買ったほうが値引きしてくれるのは、人件費が同じなら二つ売れたほうが1つあたりの人件費が低く抑えられるからです。一時間で一個の商品を作るより二つの商品を作ったほうが、一個あたりの人件費が下がるのも同じ理屈です。ただし人件費そのものが下がるわけではありません。

さらにいえば、名シェフと呼ばれる人が作った料理の値段が高いのは、人気があるうえに希少価値があるからです。また、材料が違えば原価が違い、名シェフともなれば人件費が高くなります。このように、物やサービスの価格は様々な要因を加味してできていることを著者は教えてくれます。

買い物と暮らしと教育

物やサービスは様々な要素で価格が変わっていく。では、どのような買い物をすれば得したといえるのでしょうか?
流通ジャーナリストらしく著者は本の中で様々な提言をしてくれますが、物だけではなく時間と情報に価値を認めて対価としての金銭を払うべきと説きます。ネットと店頭の値段の差だけに注目している人は、商品についての店員の説明(情報)と店員の接客(時間)の価値に気づいていない人であると嘆きます。買い物自体の楽しさを知らなすぎる、と。

理解できなかった当時の自分

同じ割引率のポイント還元と現金値引きについても著者は比較していて、割引率に差がない場合は現金の流動性を考慮すれば現金値引きのほうがお得であると結論づけます。昔ネットで出回った『同じ割引率なら現金の方がお得』という理屈に今になって納得出来ました。つまり、ポイント還元が現金に劣っているのは他店舗では使えないという流動性の悪さとポイントで購入してもポイントが付かないという付加価値の低さの二点だったのです。

夢と仕事と将来設計

欲しいものを買うときは激戦区(競争の激しい場所)で買えと念を押す著者ですが、人生では激戦区を避けるべきと助言します。人生の激戦区を避けるためには、他の人が持っていない能力(知識、技術、経験)をいかにして獲得するかが勝負所となる。つまり、中学生の今のうちから自分の夢を実現するために必要な能力を効率よく学ぶ学校や進路を探すべきと諭すのです。

若いうちは悩んでも迷ってもいい。自分がどういう仕事につきたいのか分からないうちはそれでもいい。しかし、自分は何が好きで何が得意なのか、世の中にはどんな仕事があってどんな人がいるのか。常に頭のなかに入れておいてほしい、と著者は励ますとともに釘を差すことも忘れません。アルバイトで生計を立てるのは二十代まで、と。

支出と貯蓄のバランスが大事

著者である金子哲雄さんの訃報は突然でした。直前までTVに出てお茶の間の人気者となっていたからです。さらに驚いたのは、金子さんが生前のうちに葬儀などの手続きを自分で執り行ったことでした。エンディングノートや終活といった言葉が流行語になる昨今、彼の行いは「終活」の見本としてワイドショーや雑誌などで取り上げられました。

この本を読むと、彼が計画の人であり実行の人であったことが伺えます。何より、他人のために働きたい、人の役に立ちたいという思いが強かった人だと思います。この本の語り口はとても丁寧で、中学生だけでなく難しい本を読むのにつかれた大人にもお勧めできる本です。

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