暮らしのなかの左右学 小沢康甫 東京堂出版

世界を二分する『右』と『左』

服の左前・右前に始まり、車や鉄道の右側・左側の区分事情、右巻き左巻きや左右の優位といった身近なものから世界や宇宙に至るまで、日本から左右について語った本。

和服と洋服の右前

服の右前の『前』の意味を知ってますか?

右前とは、向かって右の(着ている人にとっての左)が手前の服の合わせをいうのではありません。着ている人にとって、右の身ごろが手前(肌に近い)の状態を指します。和服は男女の区別なく右前ですが、洋服は男性が右前、女性が左前になります。(ちなみに死装束は右前です)

女性の洋服だけ左前の理由は諸説入り交じっていますが、左手前は母親が左手で子供を抱くのに都合が良かったのではないかという著者の推論は面白かったです。
にしても、洋服の左前にしても浴衣の身八つ口にしても『男が......から』という理由があるのには笑いました。

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上手は神手に通じる

舞台の上手下手についても私を含めて世間では誤解されているようです。舞台に向かって右だから上手じゃないんです。

昔、舞台は南に向けて立てられました。南面した場合、左が東になります。
東はつまり、日が昇る方向です。太陽が神さまだった昔、東が尊ばれるのも自然の成り行きでした。
これと同じ事は京都にもいえます。

古来より天皇は公の場では南に向いて座りました。中国でいう「天子南面ス」です。
南面した天皇から見て右手側を右京、左手側を左京と呼んだのです。御所を守る近衛府も同じ理由から左近衛府・右近衛府に分けられました。

日出る国の天子

ちなみに古来、日が昇る方角である左京を右京の上位に置きました。左が格上だったのです。そのため、古い縁を持つものは左(向かって右)を上座とします。ひな祭りや相撲の番付などが身近な例でしょうか。

しかし、明治維新で左優位が大きく揺らぎます。なぜなら、西洋では右優位だったからです。西洋の右優位の考え方は、皇室の公式の場やひな祭りの並び方にも影響を与えました。

また、明治時代を境に左右が逆転したことに乗馬の位置があります。それまで日本では、馬の右側から乗っていました。しかし、明治を境に馬に乗る位置が右から左に変わったのです。今では、馬の左側から乗るのが職業を問わず主流になりました。

左腰に刀を下げるかサーベルを下げるかで馬の乗る位置が全職業で変わってしまう......ものなのか? 著者が提言するようにもう一歩突っ込んだ検証が必要かもしれません。

あなたの身近な左右

取り上げている『左右』で身近なものをあげると

  • 家屋や建具の左前・右前
  • 陸上トラックの右回り左回り
  • メリーゴーランドの右回りと左回り
  • 車道・鉄道の通行区分
  • しめ縄の綯いはじめは右か左か
  • 飛行機と船の通行区分

でしょうか。

参考文献が充実していて読んでいて楽しい本でした。左舞右舞というのも初めて知りましたし、世界的には左尊右卑は珍しく、右尊左卑が主流であることも目からウロコでした。
左右を通じて世のあらゆることを紹介するこの本は、雑学好きにはたまらない本だと思います。

余談

車が左で列車も左。人は? 船は? 洗面台の排水は? この本を読んで、あなたの身近な左右を探してみてください。

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