大人の男の服装術 滝沢滋 PHP

スーツは男の戦闘服

銀座にオーダーメイドのアトリエを持つ著者が、スーツに代表される男の普段着(カジュアル以外の服)について一本筋を通した本。

男の美学はスーツに宿る

服を通して人体を知り尽くした著者がスーツの生い立ちと共に身の丈にあったスーツ(その他)の選び方を詳しく解説する。
スーツを選ぶ際に必要なことは

  • 着た時に敬意を持たれる服か
  • 仕事人として評価される服か
  • 相手に失礼にあたらない服か

の三つであり、これらを無視した装いはいくら高額な服であっても、ビジネスマンとして、男として失格であると述べている。
著 者はこの上記の三つを「礼節」の一言でまとめていますが、実に含蓄のある言葉だと思います。ビジネスの場でだらしない格好をしている人と仕事をしたいとは 誰も思わないものです。ファッションに限らず個性的であることはアピールになりますが、やはりTPOをわきまえた服装を着こなせることが大人としての条件 の一つだと思います。

仕事と同僚と相手に敬意の気持ちを持つこと。大切です。

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スーツのルーツは軍服である

著者のスタンスは明確で、スーツの着こなしはその服の生い立ちを考慮したものであるべきというもの。ベストをウエストコートと呼ぶことからも、スーツへのこだわりが感じられます。ブリトラ派? クラシコ派? 少なくともアメカジ派ではないようです。

紳士服の生い立ちを語った後にフォーマルウェアについて三十五ページに渡り詳細な解説をしているのも、礼節を重視する著者らしい。もちろん、体にあったスーツの選び方も事細かに説明していて、とても参考になりました。特にスーツを着た時に出るシワについて詳細に記述しています。シワの一つ一つにそんな理由があったなんて......。

クラシック=不変?

ただ、ちょっと服に対するこだわりが強すぎるかな、とも感じました。もちろん、服にこだわる著者の気持ちは理解できるので読んでいて不快ではありません。
例えばシャツに関する、本来はシャツは下着であり男はジャケットを人前で脱ぐものではないという記述は蒸し暑い日本の気候に合いませんし、シャツは元々下着なのだから胸ポケットをつけるべきではないとの記述にも違和感を覚えました。

逆に考えるんだ。元々下着だったシャツにポケットは不要と考えるのではなく、下着ではなくなったからシャツにポケットがついたのだ、と。

ふと、大河原遁さんのマンガ『王様の仕立て屋 サルト・フィニート』にある、スパゲッティを素手て掴んで食べる話を思い出しました。あと五十年もすれば、シャツにポケットがあることを誰も疑問に思わない世の中になっているでしょう。クラシックって、まさに大河のよう。

クロージング

強いこだわりがある一方で、礼節を認識していれば高級店やブランドにこだわるよりも自分の体にあったスーツを自分で選べることを重視していたりと柔軟な一面もあります。
特に二十代のうちから高額なスーツを着る必要はないとさえ言っています。若いうちに的確なアドバイスをしてくれるドレスコードに詳しい販売員と知りあえば、四十代五十代になるころにはドレスコードにそった自分好みのスーツを着こなせるようになる、と。

ダンディズムとは時間という裏打ちがあって成立するものなのかもしれません。
この本を読んで、そう思いました。

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