物語のレッスン 土方洋一 青簡舎

『物語を読む』という行為を考察する

物語を読んでいる時、読者の頭の中では何が起こっているのか。物語全般を対象にした、物語の構造や表現の特色について説明した本。読むという行為のメカニズムを知りたい人にお勧めの本です。

一人称の小説は主人公が書いた?

この本を手に取ったきっかけは『一人称の小説って主人公の日記だよな?』というネットの書き込みでした。その書き込みを読みながら、ふと考えたのです。一人称の地の文はいったい誰のものなのか、と。
導き出された答えは「主人公の思考を真似た作者」でした。一人称の主人公のボキャブラリーと地の文のボキャブラリーとの差異に気づいた時、一人称の地の文といえど主人公のものではないことを知ったのです。

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このカメラどこから撮ってるの?(アニメ視聴者)

この本では「語り手」という言葉が何度も出てきます。語り手=地の文の書き手になる訳ですが、この語り手は作者と同一の時もあれば異なる時もあります。しかし、読み手である読者はその違いを気に留めません。その曖昧さは日本独特のものであり、西洋では考えられないことだそうです。

リーディング・コードを解読せよ

この本では物語の定義から、言葉(記号表現)とそれを表わす概念(記号内容)との関係、ストーリー上省略できない記述(叙述)と人物や世界について主観的・情意的な記述(描写)との比較、誰が語っているのかという語り手についての解説が前半で語られます。特に、八十三ページの作者と語り手の違いについての解説は目からウロコが落ちました。

後半では語り手について事細かに解説していきます。「このうちに相違ないが」といったのは誰か。物語世界と一対をなす「語りの場」とは何か。語りの遠近(後退と没入)が読者に与える心理的距離感について。物語に登場しない作中人物。会話の妙。表記による心理表現と形容詞による心理表現。引用とコンテクストについて。読者の役割について。と、読むという行為のメカニズムについて詳細に解説していきます。

物語を読むということは行って帰ってくることである

読み進めるのは大変でしたし書かれている内容も難しい(自分は)ですが、誰でも知っている名作の文章を例文として取り上げるなど、著者の読者の理解を促す努力には頭が下がります。本当に出来の悪い読者ですみませんっ。

一つ難癖をつけるとすれば、この本を書くにあたって「日本語で書かれた物語の実情に合っていない物語理論の文献」を参考としながら、参考文献一覧をつけなかったことでしょうか。いや、これは無理というものか......。

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