渋滞学 西成活裕 新潮社

渋滞って何だ!? 滞ることさ(オチはない)

車、人、アリ、インターネット......世の中には流れが滞るものと滞らないものがある。流れが滞る原因は何か、渋滞を回避もしくは解消するためにはどうすればいいのか? 専門家である著者が丁寧親切に解説した本。

渋滞したっ! 目に見えないサグ部に渋滞した!!(絶望先生風に)

非ニュートン粒子=自己駆動粒子である車、人、ネット上を行き交う信号は渋滞する。複雑な現実の事象を解明するには優れたモデル化が必要だが、自己駆動粒子が起こす渋滞を解析する上での理論モデルとしてASEP(エイセップ)がある。
では、待ち行列理論と呼ばれるリトルの公式(待ち時間×人の到着率=待ち人数)と渋滞学とは何が違うのか? 渋滞は臨界密度以上に粒子が増えると発生する現象である。自己駆動粒子の動きは、セルオートマン法の設定を調整することで解析することが出来る。

自己駆動粒子の流量120%! メタ安定状態です!!

車の流れは自由走行相かメタ安定状態を経て渋滞相に移ることで発生する。交 通量が多い時は信号交差点が、交通量が少ない時はラウンドアバウトが最適な理由に納得。車の流れについての研究結果で面白いのは、交通量が適正なら、交差 点に信号がない方が流れが良く事故も少ないという実験結果があること。ミンツの実験に見られる群集心理が、車や人の渋滞に強い影響を与えていること。

非常時での逃走経路と建築基準法の奥深さには感心しました。非常時に人はどこから情報を得て、どういう基準で判断しているか? 分かりますか?

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世の中には、渋滞が望まれるものもある

車や人とは違うアリの渋滞。バスの団子運転を解消するための方法。インターネットの通信方法。なぜ自己駆動粒子系の解析が難しい理由。ブラジルナッツ現象が認知されていても解明されていないこと。複雑な現実を単純化、すなわにモデル化(それも良モデル化)することの有益性。今、セル生産方式が注目を集める訳。森林火災をセルオートマン法でモデル化し、パーコレーションを用いて解説。
......にしても、相続税100%は極端すぎるような。著書が提案するものは極端すぎてちょっと引いてしまいます。

目からウロコのパイこね変換

ネットワークのトポロジーと最短時間経路の難しさ。規則的ネットワークと不規則的ネットワークの中間であるスモールワールドとは。たった6人で伝わる世界。渋滞学と囚人のジレンマなどのゲーム理論の関係。
また、パイこね変換に見られるコンピューターの限界についてもページを割いていて、0から1までの数字xを0.5より大きければ2-2xし、0.5より小さければ2倍にする。これを繰り返していくうちにコンピューターは間違った答えをはじき出すというもの。

大学を評価することの難しさ

すばらしい渋滞の入門書です。章末にその章の要点が箇条書きになっているのもいい。
教授と名がつく人が書いた入門書で、ここまで真に出来のいい本は本当にまれです。専門的な知識を持たない素人相手に、読み手の立場を勘案した解説が出来る大学教授は正直少ないと感じています。以前にも書きましたが、個人的に入門書を読んで残念に思う瞬間として、

   1. 読者を見下している
   2. 自己陶酔しいてる
   3. 入門者である読者への気配りがない
   4. 論拠が不十分もしくは矛盾している
   5. 何かと自分を持ち上げる
   6. 書き手としての分をわきまえていない
があります。
意外と、教授と名がつく人は3もしくは6を満たしていないことが多い。熱が入りすぎて押し売りになってしまうのでしょう。

果たして全体は部分の集まりか?

この本は、様々な科学分野にわたる渋滞学について、車、人などを例に初心者・入門者にも分かりやすく、かつ詳細に渋滞現象について解説した本です。

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