街場の中国論 内田樹 ミシマ社

日本にとっての中国と、中国にとっての日本

中国を取り巻く近世から現代に至る歴史と中国人が持っている精神構造について、日本の同時代と日本人特有の精神構造を比較対象にして解説した本。

著者は現在の中国が抱える問題を「増え続ける人口に統治能力が追いつかないことが原因」と喝破します。政府主導のナショナリズムも事実から人民の目をそらすためであり、中国が内乱状態になったときのリスクを考えれば日本人は中国の反日活動を甘受すべきだ、とまで説いています。

中国が内乱状態になったときのリスクはそれはもう想像を絶するでしょうから著者の主張も分からなくはないのですが、そんなことをしても第二の北朝鮮を生むだけで、それこそ日本に何ら実利をもたらさないと思います。

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中国が一つじゃない方が、いろいろな問題が片付く

著者は二国の近代の歴史に触れ、なぜ日本で出来たことが中国では出来なかったのかを詳細に解説します。
西欧列強への対応が二極化した理由として、著者はそれぞれの民族が持つ精神構造をあげます。自分たちの欠点や弱みを認めようとしない中国人と、他に模範を求めるが故に自らを改めることをためらわない日本人の差です。

もう一つは、中央集権制度の清国と封建制度の江戸幕府の制度の違い、制度を支える人々の為政者としての自覚の差だと力説します。また、日本には約二百七十もの藩があったことで、数の上でも幕末から明治まで質の良い人材を供給することが出来たと結びます。

幕藩体制という現在の連邦制度

中央集権国家は効率的には申し分ない制度だが非常時や緊急時の対応に関しては封建国家の方が柔軟性があり、その点日本は幸運だったという著者の理屈は説得力があります。中央集権国家は地方の首長達が中央政府に依存しすぎてしまうため、思考力や行動力が衰弱してしまそうです。なるほど、これも現代の日本を見ると納得できます。

中国は国家が分裂しているほうが常態である。そう考えた方が、すべての問題が解けるような気がします。
そもそもなぜ、中国が統一されていなければならないのか。それは中国が統一されていないと、中国人の精神的支柱である華夷思想に相反するからです。つまり結局は自分たちの国益のためです。周辺の国々から多くを分捕るためです。まあ、各国にくさびを打ち込み、アジア共同体の成立を妨害するアメリカも似たようなものですけどね。

広大な国土と多彩な民族を治めるには一筋縄ではいきません。考えてみると、貧富の差があり向上心が旺盛で自分本位の考え方を持ち人一倍利益に敏感な中国人は、どの民族より統治が難しい民族なのかもしれません。(一番統治しやすいのが日本人)
そんな多民族国家を束ねるためには、たった一つのスローガンが有効です。毛沢東はそれを理解していました。

しかし、一党独裁による中央集権という方法は百人百色の中国人に一番合わない政治制度のようにも思います。それが今まで維持できているのは、希代のカリスマであった毛沢東の影響力のおかげでしょう。ここまでくると、呪いのたぐいかもしれませんが。

この本は、日本人が知らない中国の近世の歴史と日本人が気づかない中国人の精神構造ついて、なるべく客観的な視点から解説した本です。

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