日本辺境論 内田樹 新潮社

世界に一つだけの辺境

世界に類を見ない空前絶後の辺境性が日本独自の文化を育む苗床となったと著者は力説し、中華思想(華夷秩序)の中心である中国との絶妙な距離が生んだ日本文化ひいては日本人の気質を解説した本。

世界中の至る所に辺境は存在した。それらの辺境と日本はどこが違ったのか。著者は理由を継続期間の違いとする。日本以外の辺境は時代と共に常に変動してきた。なぜなら中心が時代と共に移り変わっていったからである。
しかし日本の場合、弥生時代の昔から中心は常に中国であり、アヘン戦争までそれは変わらなかった。近世に至るまで日本は、いわば不動の辺境だったのだ。

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日本辺境論 (新潮新書)

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空を飛ぶためには、大地を蹴らなければいけない

中心である中国から日本は遠く、また島国だったことも世界の他の辺境にはない特徴である。近ければ中国の影響を受けやすく、たとえ遠くても陸続きであれば直接的な影響を免れることは出来ない。例を挙げれば、朝鮮半島国家が常に中国の政治動向に一喜一憂してきたようにである。幸い日本は中国から距離も遠く島国だったので、間接的な影響を受けるにとどまった。
近すぎず遠すぎず。その絶妙な距離が日本に他の辺境にはない独自の文化を生むこととなる。

そして日本が他の辺境と一番違ったのは、辺境であることを逆手にとって成功したことだろう。

『日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す』

この文言は華夷秩序を根底から揺さぶり、中国を中心とした国際秩序を否定したも同然だったのだが、中国が大人の態度を見せ日本を咎めたりしなかった。結果的に日本の無知が超大国である随に通じたのである。陸続きの朝鮮やベトナムではこういう事態にも結果にもならなかっただろう。
それ以後の日本は中国を中心と認めつつも距離を置き、独自の文化を発展させていくこととなる。

辺境であることの優位性

この本は、日本が辺境として歴史を重ねてきたことで他に例をみない性質(自分以外に模範を求める姿勢・合否を本能的に嗅ぎ分ける嗅覚・愚直に道を究める職人気質)を持った経緯を解説し、その世界的に希有な性質を自覚することこそ今の日本人に求められていると説く。
改める必要はない。世界中の民族はどこかしら偏っているものだ。らしさは長所でもあり短所でもある。日本人らしさを長所に変えること。これがこの本が力説するこれらかの日本人像である。

この本は、日本人である我々が歴史に根ざした自分たちの性質を自覚することで、世界に通用する国際人として自立することを促した本である。

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