現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一(著)守屋淳(訳) 筑摩書房

孔子が説く富貴の道とは

日本資本主義の父とも日本実業界の父とも呼ばれる人物、渋沢栄一の講演の口述をまとめた「論語と算盤」の中から今の日本に必要と思われる部分を現代語に訳した本。

渋沢栄一は人の欲望に根ざした資本主義の危うさを指摘し、それを補うものとして「論語」を思想を取り上げて解説している。渋沢は資本主義が人の欲を 原動力とする以上、暴走する危険があることに気づいていた。そしてその暴走を食い止めるためには、実業家たちの倫理が必要不可欠なことも知っていた。

すなわち、フェアーであること、利己的思考に歯止めをかけること、人々や国にとってそれが有益か考えること、などである。

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現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

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商いにも王道はある

自己中心的な思想が経済や国をいかにダメにするかを理解していた渋沢は、実業家たちが守るべき倫理を宗教ではなく論語に求めた。論語は人としていかに生きるべきかを説いたものであり、その思想が実業家たちの倫理を高めると考えたのだろう。

孔子は後世の人々に誤解されてきた。誤解の一つが、孔子は商売(経済活動)に否定的だったという説。孔子は思想家であり教育家であり実務家であり、少なくとも象牙の塔の住人ではなかった。世の中における経済の重要性を知っていた孔子が、世の中で重要な役割を果たしている人々を忌避する理由がない。孔子は経済活動そのものではなく、経済活動に携わる人々が陥りやすい自己中心的な人格を蔑視していたのではないか。

渋沢は国民の知識水準は上がったが国民の倫理基準はむしろ低下したと嘆き、学校教育は知識よりまず倫理を教えるべきと力説する。良い悪いの判断が出来てこそ知識を生かすことが出来る、と。
商売に王道はない、と考える世界の本流(代表的な民族が中国とユダヤ)とは違う、日本人らしい考え方にグッと来るものがありました。

私益<公益<国益

渋沢の判断基準は明確で、それが人々や国にとって有益か否かがすべての基準となった。会社設立や女性教育や福祉の必要性を説いたのも、それが人々や国に有益だと彼が判断したためだ。反面、渋沢は個人の利益だけを追求した行動を嫌った。岩崎弥太郎とケンカ別れした一件は有名な話。

面白いのは、人々や国の利益は個人の利益につながると説いた点。情けは人のためならずの実益版と解釈するのが分かりやすい。公益は私益に返るが私益は公益にならず。ただ私益が集まったものに過ぎない。だからこそ渋沢は、実業家は自分の利益ではなく公益を考えて行動すべきと説いた。

この本は、資本主義の危険性を見抜いた渋沢栄一が自己の利益だけを求めて行動することの危険性を説き、利益ではなく倫理で行動することの必要性を解説している。

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